『夏の滴』(著:桐生祐狩 角川書店)


うーん、主人公たちに全く共感できなかった。
協調性ゼロの・八重垣潤を最初から最後までクラス全員によるイジメ。
特に男子によるイジメというか暴行というか、そういった描写が何度もされていて、
主人公たちはそれが、まるで日常の行為で当たり前だといわんばかり。
主人公が小学生だから仕方ない・・・・・・では済まされないよなあ、これ。
イジメの対象である八重垣を人間扱いしないどころか、バイキン扱い。
正直、読んでいて不快になったのは久しぶり。
ホラー小説なので、最後のほうにはグロや人間の凶悪な部分が垣間見れるけど、
そこより小学生の集団暴行の方が印象強かった。
オレが小学生の頃はここまで酷くなかった・・・・・それとも今日のイジメはこんな感じなのか?
主人公とその仲間たちの小学生らしからぬ口調、妙に大人びた言動、そして頭の悪さ。
小学生設定はミスなんじゃないかと思える。
八重垣が学校に持ってきた本・“植物占い”がよく当たる占いで一時はクラスの注目の的・・・・・だと?
イジメられてたら本を持って来ても、シカトなり何なりされて本の存在に気付かないんじゃないか?
気付いたとしてもイジメの対象者の占い対してキャーキャー騒ぐか?
主人公が足に障害を持った友達を引き上げるって、どんだけ力があるんだか(笑)
イジメによる怪我に気付かない親とか、
他にも色々と突っ込みどころというか不自然満載だった。
イジメの他にも近親相姦、カニバリズム
よく発禁にならないものだと。
足の障害も癌もHIVもエボラもどんな病気もなんのその、
子供を犠牲にした薬が万能薬となり治癒してしまう。
かなり無理のある設定だけど、それを巡る大人たちのエゴ、
親友で解かり合っていた仲と思っていた友達の裏切り、
挙句に世界を巻き込んでの万能薬を巡る救いようの無いバッドエンド。
最後の最後まで改心できなかった人間だらけだったので、こういう終わり方でも嫌な感じはしなかった。
“お苑の手記”から万能薬の始まりは昔からあったことが判明されるけど、
現代を舞台にするより“お苑の手記”の時代を舞台にしてもらったほうが楽しめたかも。
それにしてもクラスの異常さ、はたまた町ぐるみの異常さには確かにゾッとさせられる。
つーか、まともな登場人物は誰一人いなかったような気がする・・・・・。