『蒲生邸事件』(著:宮部みゆき 文春文庫)


小説を5〜6冊読んでいたけど、感想を書く気が起きなかったんで、久しぶりにということで。
どうして小説に出てくる若者はあんなに態度が悪いんだろう。
目上や初対面の人間に対して感情むき出し、時にはタメ口ですが、何か?という主人公は読んでて微妙。それともオレの頭が固いのか?
大学受験に失敗し、浪人生活へと突入した主人公はとある宿泊先のホテルで火事に遭うも、平田という人物に命を救われる。が、連れてこられたのは昭和11年2月26日の元陸軍大将・蒲生憲之の邸宅。まさに二・二六事件が起きようとしている時代へとタイムトリップしてきた。
そこで蒲生憲之は本当に自殺をしたのか、主人公が探偵気どりになる展開には驚いた。ついでに空気読めない感じが否めなかったけど(笑)
蒲生邸に住み込みの女中・ふきに恋をしたり、好奇心が溢れ外に出てみたり、またどこまで史実なのかは分からないけど、二・二六事件当時の人々の暮らしや街の様子など興味を覚える。そのため単調ではなく飽きることのない展開だった。
で、タイムトリップができる平田は未来を知ることができるため、人の命を救ったり、もしくは救わないことで間接的に殺したりすることが出来てしまう、いわば“まがい物の神”であることへの嫌悪からくる葛藤、それとは逆にタイムトリップの能力を誇りに思い、大切な人のためならばと能力の使用に躊躇しない叔母の黒井、その二人の対比。
タイムトリップを使うことで分かったことは細かい歴史は変えられるが、大きな事象は変えることができない。
仮に大惨事の事故を一時は回避出来たとしても、犠牲者が変わっただけで大惨事の事故が起こることは必然という訳らしい。……が、それって後々にかなりの影響を及ぼすよなあ。平田が行動を起こしたことで代わりとなって死んだ人たちの子孫はそこで消える訳だから、生まれる筈の人たちを殺してしまうことと一緒。この辺は読んでて釈然としなかった。
主人公は今までの自己中っぷりの挙句にふきを現代に連れて帰るだと?勘弁してくれ。危うく本を閉じて本棚へ直行しそうになったぞ(笑)
結局、現代に戻った主人公はふきとの再会の約束にそれほど時間の経過を感じないが、ふきにとっては何十年という長い年月を経てのこと。この辺は少し感動したし、時間の重みを読み取ることができたかな。