奥白根山(1回目)− 滑落&道迷い −

もう少し早く出発したかったが、ダラダラと過ごしてしまい6時前に「湯元本通り北駐車場」を出発。

標高がそれなりに高いためけっこう寒い。


ルート。
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真っすぐ進み、日光湯元スキー場へ。

入ってすぐに登山ポストあり。早朝散歩をしていたご夫婦と少し話し、改めて出発。
スキー場を駆け回る鹿たち。

天気は上々。

まずは前白根山を目指す。

ここから本格的な登山道。けっこうな急登だ。


しばらく登ると雪が登場。

念のため12本爪のアイゼンを持ってきたがまだ装着しない。
7時過ぎに外山鞍部辺りに到着。

少し平坦な道になったがすぐに登りとなった。今度は豊富な雪がお出迎え。

トレースはしっかりついていたので迷うことはなし。
天狗平に到着。

広い。この時期なら休憩にうってつけなのではないだろうか。夏は虫が多そうだけど。
休憩せずに進む。
すると右に前白根山、奥に目的地となる奥白根山が見えた。

8時に前白根山に到着!

疲れた!しかしいい景色だ。そして山頂が広く、誰もいない。撮り放題です。そんな訳で何枚か自撮りしましたw
休憩はしたので出発。眼下に五色沼

大好きな尾根を歩く。

ここを下るようだ。

道標と木で通行を塞いでなかったら左に行っていたかもしれない…。
五色沼避難小屋に到着。

中は覗かず先へ進んだ。
ここから先は雪の登りが延々と続くっぽいのでここでアイゼンを装着。

めっちゃ急登でした。正直なところちょっと怖い。


五色沼と先程までいた前白根山が見下ろせる。

長い急登だ。

つかこれ下りに使って人は怖くないんかな。
ヒーヒー言いながらやっと登山道らしいところに出た。ここから先はアイゼンは不要と判断して外す。

いつアイゼン脱着するか、タイミングが難しい。
あ、あれが山頂か。山頂なのか。

なんか池の跡?

安全祈願。

最後にもうひと踏ん張り。


関東以北の最高峰、奥白根山に到着!


いやー疲れたけど清々しいねえ。


温度計を見ると20度を少し超えてた。

景色も最高。



前日に登った男体山中禅寺湖も見える。

弥陀ヶ池。

翌日が平日だからか、それともまだ残雪時期だからか人がほとんどいない。男体山と比べてウソのようだ。
おにぎりとパンをぱくついていたら…鹿。は?


なんという健脚。つかこんなところまで餌を求めてやってくるのか。こうして高山植物が減っていくのかな?…ジビエにしちまうぞ!


さて十分休憩したので行動しますか。

弥陀ヶ池方面へ。こっちのルートも急斜面だ。だが雪は殆ど無い。

弥陀ヶ池近くまで来たがせっかくなので座禅山とやらも見てみようと寄り道。

あれ?火口?

座禅山火口だそうです。

いつのまにか座禅山を通り過ぎた?不思議に思いながらもとりあえず戻ることに…あ、あった。

小さすぎる文字で完全に見落としてたというか。
おそらくこの上が本当の座禅山なのではないだろうか。

残念ながらロープが張られていたので座禅山はここまでにする。本来のルートへ。
弥陀ヶ池。

左に行ったら菅沼登山口へ繋がるようだ。
五色山へ向かう分岐。後ほど利用。

五色沼に到着。

近くによるとズブリと沈む。

水が冷たくて最高に気持ちいい。

水中の白い部分は完全に氷だった。もうツルッツルッよ!
奥白根山五色沼

白根山から五色沼避難小屋へ向かう途中の尾根。

さて休憩はしたので出発。
ここも雪がバッチリ残ってた。

この雪はいつ頃まで残っているのか。


12時過ぎ、五色山山頂に到着。

ここも素晴らしい眺望。

つかけっこう暑い。なのできれいな雪を帽子に少し詰め込んでそのまま被る…あー、これありだわ。新発見であった。


国境平を目指す。途中から朝に登ってきたルートとスキー場が見えた。


手前のこんもりしたところが国境平かな。

はい、ここでやらかす。
何気なく撮ったが、当時はあれが国境平と理解してなかった。なので意識をしてなかったのでスルーしてしまった。
見ているつもりが見ていなかった。またトレースを信用しきっていたのも良くなかった。まだここでは通り過ぎていない時間帯だが、なぜ意識をしていなかったのか。不思議でならない。
それと五色山から国境平までおおよその時間は30分。

とにかくここまで来てしまうと既に下山ルートである国境平分岐を過ぎていたのは確実だ。
しかも何を血迷ったのかこれを下りようとしてしまった…流石に間違っているとすぐに気づいたが。

気持ちは国境平、現実は金精山へガンガン進んでいた。
先程下りようとしてしまった先はほぼ崖だった。
怖い怖い。

でそんな訳で13時に予想外の金精山に到着!



流石にちょっと混乱した。
ここで引き返せばまだ良かった。ここまで国境平から30分くらいだし。
しかし焦ってしまったので国境平から金精峠(金精山より先)までの時間を見てしまい、金精山から国境平まで1時間かかってしまうと思い込んでしまった。
これも大変よろしくない。
本来はここで戻れば30分くらいで国境平付近まで戻れたはずだから。
とにかくここまで来てしまったらエスケープルートとして金精峠まで進み、金精峠トンネルの駐車場に下山。そこから道路を歩いて湯元温泉まで戻ったほうが早そうだ、そう思い実行に移した。
それでもこの時点では現在地が判っているし、時間もまだまだあるためルート変更しても問題ない状況だ。


が、思っていたより道狭くところどころ雪で覆われていてしかも急斜面が現れた。

2つか3つ目くらいの小さな赤いハシゴを過ぎたところで雪の急斜面と遭遇。見た瞬間、「これはなんか危険だ」と感じたが、ここを乗り越えなければ帰れない、とすぐに思い直す。
足跡を見るとこの急登を登ってきているようだったが…。これ下りるんじゃなくて右に横移動するんじゃ、と思いデジ一で横移動する先を望遠で見たが足跡やリボンなどは………なかった。
あー、やはりこれを下りなければならないのか(´・ω・`)
ここで良くない行動。急斜面への恐怖で尻をつきながら下りようとしてしまったことだ。中腰になって下りれば滑落することはなかったかもしれない。


とにかく尻をつきながら踵で段差を作りながら下りていたが、3歩目辺りで滑ってしまった。
どこで弾みがついたのか気づいたらゴロゴロ回転しながら勢いが全く緩まず滑落してしまった。
何かに当たったりしているという感覚はあった。
「これはもうダメかもしれない」そんな思いがよぎった。
しかし20m位だろうか、本当に幸運にも止まった。
そのときに思ったのは「なんだ生きてるのか」と。


なんとか落ち着き立ち上がったが、顔から血がボタボタ落ちた。
一瞬何かわからなかったが、どうやら鼻血のようだ、それと唇をザックリ切っていた。
他に体に異常がないかどうか確認。そのときに青い帽子とタオル、カメラがないことに気づいた。見渡すと2mほどのところにカメラが転がっているのを発見。レンズカバーは無くなっていたがカメラを紛失していないことに少し驚いた。
ザックを下ろしたときに左側のベルト調整部分が避けた状態。長袖だったから良かったのだろう、服は破れてしまったが擦り傷で済んでいた。
両腕、目蓋、頬と両腕の擦り傷と全身の打ち身程度で済んだことが不幸中の幸い。
血が流れ落ち続けている鼻にティッシュを詰め込み、まだある水で裂けた唇の汚れを落とす。ちなみに水は0.5リットルのスポーツドリンクと2リットルの水道水を常に持参。
カメラは壊れてしまったかなと思い、試しに撮ってみたが確認画面が出なかったので壊れたと勘違い。とうやら一時的なもののようでしっかり撮れていた。

唇と鼻は岩や木に当ってしまったのだろう。それにしても手足が無事なことが奇跡だ。
スマホを見ると電波が入っていたので状況を親に連絡。金精峠トンネルの駐車場に下山し、湯元温泉へ向かうことも。


時間がまだ遅くないこと、日照時間が長い時期になっていたこと、これも良かった。
とりあえず滑落した斜面を登るには精神的肉体的にズタボロで無理と判断。
正規ルートを外れているのは間違いないが、とりあえず尾根伝いに下りることにする。
時折、熊よけのような鈴の音が聞こえたが、よくよく聞くと鳥の鳴き声だったりでどうやら不安と疲れから、自分にとって都合のいい幻聴となっていたようだ。
幻聴だと気づいたときは心底ガッカリしたことと同時に少しゾッとした。
本で遭難者の体験談を読んだが、まさか自分が幻聴を聴く状況に陥るとは思いもしなかった。


コンパスを頻繁に見ながら右側に寄りつつ下りたほうがいいと思い、思い切って雪に埋もれている涸れ沢なようなところを進むことにした。
これが本当に大正解だった。
その涸れ沢のど真ん中に立っている木にピンクリボンが巻かれているのを発見した。
本当に心の底から安堵した。そして道標もあった。
どうやら金精峠と菅沼登山口を結ぶルートにぶつかったようだ。
このときは菅沼登山口を目指したほうがあまり登りがなさそうだったので良かったかもしれない。しかし菅沼登山口から湯元温泉までかなり長い距離になる。
今思うと誰かにお願いして乗せてもらえばよかったのかもしれないが、万が一登山者がいなかったら絶望的である。
そんな訳でやはり予定通り(?)の金精峠を目指す。


時間が経つに連れて緊張が薄くなり、体の痛みが目立つようになってきた。
この体で登りが続く金精峠まではかなりきついものがあった。数歩進んでは休むを繰り返し、14時に金精峠に到着。

金精神社。

正規ルートに出るまでは、嫌な考えが巡り最悪ビバークする覚悟はあった。
それがなんとかなりそうだ。ただ、もうここから動きたくないってのが正直な気持ちだった。
とはいえ一晩ここで明かすわけにもいかないので、動かない体を叱咤してまずは目指せ金精峠トンネル駐車場。
が、出鼻を挫くように数メートルではあるが雪の壁が立ち塞がる。これを登れる体力気力がなかったら菅沼登山口を目指すしかない。
しかし、この壁をなんとかして超えると急斜面ではあるがロープやハシゴが設置されていることに安心する。
ああ、俺の知っている登山道ってのはこういうのだよ、なんて思いながら14時半に金精峠トンネルになんとか到着。

あとはひたすら道路を歩いて湯元温泉を目指すのみ。道迷いの心配がないだけ非常にホッとした。


とはいえ傷ついた体で約5キロのアスファルトを歩くのは流石に堪えた。
そんなときに「金精道路出合」という分岐から前日に観光した湯ノ平湿原にショートカットできた。この下りのときの段差を下りるちょっとした振動と深呼吸をすると胸が非常に痛い。もしかして肋骨にヒビでも入っているかもしれない。
命からがら駐車場に到着。
唇と胸が心配なので、血だらけになった服を着替え、ビジターセンターへ向かい、休日診療所を教えてもらう。
「救急車を呼ぼうか?」と聞かれたがこの状態で数時間歩いてきたし、あとで車を取りに来るのも面倒だし、激痛が走るってほどでもないため丁重にお断りをし、滑落した場所と状況を教え礼を言って車へ。
せっかくの温泉地なのに2日目は入る余裕が無いとか自分にガッカリだよ!


休日診療所は日光市街地にあるとのことなので車でゴー。
「森病院」で裂けた唇を縫うことになり、深呼吸すると胸が痛いので念のためのレントゲンをしてもらった。が、骨には特に異常なし…だと?
うーん、強打しただけってことだろうか。今現在も痛く、深呼吸やくしゃみ、重い物をもとうとするとけっこう痛い。特にくしゃみなんて激痛。
両腕の擦り傷とか他の打撲箇所とかあったけど大した怪我ではなかったので、診てもらわなかった。
紹介状をもらい地元の病院で抜糸。
預り金として1万円。お釣りは後日、現金書留で送ってくれた。


弥陀ヶ池辺りで他の登山者から聞いた情報では、5月いっぱいまでは菅沼登山口の駐車場は無料だそうだ。この情報は全く知らなかった(´・ω・`)
まあ、なんにせよ雪がなくなったら滑落した場所を確認したいし、紛失した物を取りに行きたい。まさか金精山でリベンジ魂に火がつくとは…


ベルト調整部分が裂けたザック。

デジ一をザックに取り付ける道具の破損。ついでに望遠ができなくなった(´・ω・`)。


色々買い揃えないといけなくなった痛い出費…。次は雪のない山でゆっくり時間をかけて楽しみたい。
そして今一度、地図とコンパスの使い方の再確認。スマホGPSアプリの使い方など…色々課題が浮き彫りになった山行でした。